研究概要 |
本研究では,ダイヤモンド結晶の半導体としての性質に着目し,低ノイズ放射線検出器を開発することを目的としている. 測定に用いたダイヤモンド結晶試料は,化学蒸着(CVD)法により作成された1cm×1cm×250umのものである.信号読み出し電極として,両面に0.8cm×0.8cmの面積で,ダイヤモンド側からTi/Pt/Auのメタライズ処理が行われている. 検出器での性能はノイズ量と信号量によって評価できる.ノイズ量は,暗電流量や検出器の静電容量に関係している.そのため,ダイヤモンドの暗電流量を測定した.暗電流は印可電圧を増すにつれて増加したが,印加電圧100Vでも暗電流量は約1.5pAと小さかった.次に3MBqのSr90を検出器表面から約5mm離れたところに設置し,β線照射時に検出器に流れる電流量を測定した.印加電圧100Vでは暗電流量に比べ約6倍の電流量が観測され,放射線強度測定への応用が期待される. 次に検出器に増幅器を接続し,オシロスコープを用いて,ノイズとα線信号を観察した.ノイズ量は,印加電圧によらずほぼ一定であった.これはノイズ源が暗電流以外の要因によるものであることを示している.そのため読み出し回路系等の改良により,より低ノイズを実現できる可能性がある.またAm241からのα線信号をオシロスコープにより確認できた.しかしα線の空気中での散乱により,正確なエネルギーを測定することができなかった.現在の実験システムにおけるα線の信号・ノイズ比は4〜5程度であった. 本研究により,ダイヤモンド結晶の放射線検出器としての動作が確認できた.また,回路系等に改良を加えることでより信号・ノイズ比を向上できる可能性があることが示された.
|