研究概要 |
遷移金属クラスターの幾何学的磁気構造を明らかにすることを目的として、平成9年度にワークステーションを購入し、2年間に亘り以下の研究を実施した。 1. 従来の局所密度汎関数法による電子状態の計算を行うとともに、より精度が高いとされるハートリー・フォック-密度汎関数混成法による計算が可能なプログラムを導入し、いくつかの遷移金属クラスターについて計算を行い、計算法や基底の選択法の妥当性を議論した。 2. Mn,Cr,Feクラスターなどで生じることが予想される非共線(non-collinear)磁気モーメントを局所密度汎関数法の範囲で計算するためのプログラムを作製し、これらクラスターの原子構造と非共線な磁気モーメントの発生との関係を議論した。 上記の研究から、2年間で以下のことについて明らかにし、なお研究が進行中である。 1. Coクラスターについて、原子数が150程度のかなり大きな系の計算を行い、磁気モーメントの幾何学的構造、すなわち、表面から内部に従って起こる振動構造をより明らかにした。 2. Niクラスターの磁気モーメントは、孤立原子の磁気モーメントに近い大きな値をもつことが実験的に知られているが、局所密度汎関数法では、それよりかなり小さい結晶の値に近い磁気モーメントを導く。今回、原子構造を最適化したハートリー・フォック-密度汎関数混成法による計算を行ったが、この方法によっても磁気モーメントは局所汎関数法と類似の結晶に近い値となった。この件に関しては現在論文査読者と議論中である。 3. Feクラスターについて非共線スピン分極LCAO法による電子状態の計算を行い、強磁性的な配向の磁気モーメントをもつ状態とエネルギー的にかなり近い状態で非共線磁気モーメントをもつ状態が存在することを示すとともに原子構造と磁気モーメントの関係についても明らかにしつつある。この研究は次年度も引き続き行う予定である。
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