研究概要 |
今年度,LuFe_2O_4について,中性子線散乱並びに,放射光を用いたX線異常分散による解析を行った.その結果判明した事柄を列記する. (i)RFe_2O_4の電荷秩序構造は自発分極を持っており,この物質は誘電体として振る舞う.誘電率は10^4のオーダーと大きく,鉄イオン間の電子移動に伴い分極の反転が起こる. (ii)この物質は,電荷の秩序に関して高温から,無秩序状態→二次元電荷密度波(CDW)状態→三次元CDW状態と逐次転移をする. (iii)約500K以下で現れる二次元CDW状態は,三角格子の面内で波数(1/3 1/3)で伝播する電荷の波で記述される.誘電的見地から見ると電荷移動の性質からこの相は二次元強誘電相のランダムな積層状態と見ることができる. (iv)350K以下に現れる三次元CDW状態では層間の位相が逆位相,したがって全体として反強誘電相となっている可能性がある.これに加えて面内の秩序も長周期の変調を受けた不整合相となる. 現在,放射光を用いた鉄イオンK殻吸収端近傍でのX線異常分散による結晶構造解析により,室温で存在している鉄イオンの電荷秩序配列の電子密度分布を求めることを試みている.
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