研究概要 |
量子ホール系は典型的な強相関電子系であり,内部自由度の存在は電子相関に大きな影響を及ぼす.特に,層自由度を持つ二層量子ホール系においては,相関の様子を決めるパラメータ(層間トンネルの振幅や層間隔の大きさ)を制御できるため,多彩な状態が実現される.この層自由度は擬スピンを用いてよく記述されるが,ランダウ準位占有率がν=1/(奇数)の場合には,基底状態に擬スピン強磁性秩序が形成される.なかでも,最も基本的なν=1の擬スピン強磁性相に対しては,基底状態波動関数が一般化されたコヒーレント状態で表されることを乱雑位相近似で示した.この結果は,量子ホール系における電子・正孔対をポゾンとして近似することに基づいているが,今年度はこのアプローチをさらに進めた.つまり,Quantum Hall Ferromagnetと呼ばれるν=1/(奇数)のスピン自由度を持つ量子ホール系に対し,そのフェルミ多体系ゆえの非線形性をボゾン化法に基づいて解析した(その成果の一部は来年度前半に「物性研究」に発表される予定).現在もこのアプローチから研究を継続中であり,ボーズ凝縮との関連も追究する予定である.また,最近は複合粒子の対形成の可能性や非対角長距離秩序の存在が指摘されているが,それらに関しても理論的考察を進め,その内容の一部を1999年3月10日配本の著書の中で報告した.この教科書は,分数量子ホール効果の研究の最近の進展をまとめたもので,青木秀夫教授(東大理)をその共著者とする.
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