研究概要 |
YMn_2は常圧下でネール温度が100Kの反強磁性体であるが,0.3GPa以上の圧力下では磁気秩序が消失する。本研究では、YMn_2に1.2GPaまでの圧力をかけ、その磁気的性質を^<55>Mn-NMRとNQRを用いて調べた。特に、そのスピン相関を銅酸化物超伝導体のものと比較した。以下、本研究で得られた結果について述べる。 まず、0.33GPaから0.4GPaまでの圧力の範囲内では、反強磁性相と常磁性相の共存を見い出し、圧力誘起相転移が1次相転移であることを明らかにした。次に、常圧下でナイトシフトを測定し、スピン帯磁率を評価した結果、この物質のエネルギーバンド幅が電子相関を取り入れない計算値よりも6倍ほど狭いことを明らかにした。これは電子相関の効果であると考えられる。次に、0.4GPaと8.5GPaの圧力下でナイトシフトを4.2Kから300Kまでの温度範囲内で測定した。ナイトシフトの大きさは圧力とともに減少した。Mn核の超微細相互作用が負であるので、この結果はエネルギーバンド幅が圧力とともに増大することを示すものである。これは、圧力はMn3d電子の遍歴性を増大させた結果と考えられる。 さらに、0.33GPa,0.40GPa,0.85GPaと1.2GPaの圧力下で核スピン緩和率1/T_1を測定した。1/T_1が低温で異方的スピンゆらぎの理論に従うが高温では局在的スピンゆらぎの振る舞いを示す。このクロスオーバー温度が圧力とともに増大する。これは圧力とともに、Mn3d電子の遍歴性が増大した結果と考えられ、先のナイトシフトの結果と一致する。また、このクロスオーバーが銅酸化物に似ていることを指摘した。
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