研究概要 |
本研究の目標であった,赤外シンクロトロン放射光の円偏光成分を使った磁気円偏光二色性の測定手法は,本研究1年目にほぼ完成した。本年度は,温度等の制御精度の向上をめざし,装置の改良を行った。 今年度は,アンチモン化セリウム(CeSb)及びビスマス化セリウム(CeBi)の磁気相転移に伴う電子状態の変化を調べた。その結果,どちらの物質でも磁気相転移に伴ってフエルミ準位近傍の電子状態が顕著に変化することが,光のエネルギー0.1-1eVの範囲の磁場下での光反射スペクトル及び磁気円偏光二色性スペクトルで観測された。このエネルギー領域で観測しているのは,価電子帯最上部の配位子のpバンドと,伝動体最下部のCe5dバンド間の吸収であり,光学スペクトルの変化は,それらのバンドが磁気相転移に伴って変化していることを示している。磁気構造が出現することによってエネルギーバンドが折り返されるが,それだけではここで観測された光学スペクトルの変化は説明できない。そこで,価電子帯のpバンドか伝導帯のdバンドが,磁気相転移に伴って大きく動いていることがわかった。このことは,CeSbやCeBiの複雑な磁気相転移を理解する上で重要な情報を与えている。 その他,近藤絶縁体と呼ばれる物質の1つである12ほう化イッテルビウム(YbB_<12>)のエネルギーギャップの生成のメカニズムを調べるために,光反射スペクトルの温度変化やYbをLuに置換した物質のスペクトルの置換量依存性の詳細なデータを得た。
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