粉粒体に重力に逆らうように振動をかけると流動化し様々な現象が起こる。このような系は粉体振動層と呼ばれ、工業的な重要性のみならず粉粒体の固体的性質と流体的な性質の転移を研究するうえで格好の対象となる系である。本研究では、粉粒体を物理学および統計力学的な立場からの統一的な理解目指し、その第一歩として、熱平衡系およびその近傍で確立されてきた知識がどの程度、粉体振動層の理解に役立つかを明瞭にすることを目的としている。 昨年度の研究成果により粒径分散を持つ粉粒体の流動化現象の熱平衡系における固液相転移との相似が明らかになってきた。今年度は、こうした考察をさらに深めると共に粉粒体の内部状態をより良く記述するパラメータを明らかにすることに力を入れた。 具体的には、粉体振動層においてみられる対流ロールパターンの発生を制御するパラメータを粒子動力学法によるシミュレーションにより明らかにしたことがあげられる。このパラメータは、熱対流ロール生成のパラメータであるレイリー数のように安定化させる力と不安定化させる力の比になっているが、それらの力そのものは粉体独自のものを導入する必要がある。とくに物質の性質(状態)を示す物理定数(流体の粘性などに相当するもの)の妥当なものを提案できたと思っている。これは、粒子一つ一つの動きをすべて追ったうえでマクロな物性値を知ることができる粒子動力学シミュレーションならではの成果といえよう。
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