研究概要 |
本研究は、通常、不規則電子系で観測される波動関数の局在ー非局在転移、いわゆるアンダーソン転移が、光などの古典波で見られるか、見られるとしたらどのような条件で見られ、その臨界的な振る舞いはどのようなものになるかを調べることにある。 光のアンダーソン転移は電子系でのオーソゴナルユニバーサリティクラスで記述されることが期待される。本研究ではまず、この電子系での臨界指数の精密な決定をスケーリング補正まで取り入れて行った。その結果、波動関数の局在長が1.57+0.02というユニバーサルな値をとることを示した[1,2]。また、不規則媒質でのアンダーソン転移点での透過率の計算を行い、これがサイズには依存しないが系の境界条件には依存することを明らかにした[1,3]。 光と並んで重要な古典波として格子振動があげられる。本研究では格子振動の局在ー非局在転移を調べ、アンダーソン転移の起こる条件とその振る舞いを明らかにした[4]。以上が初年度の結果である。 こうしたランダムな媒質を考える上では、サイトポテンシャルがランダムな値を取っているというよりも、サイトのつながり方がランダムであると考えたほうが自然だと思われる。そこで、次年度では量子パーコレーションの問題を解析し、これが通常のアンダーソン転移のユニバーサリティクラスで十分記述できることを示した[5]。 光の局在特有の現象として、吸収や放出などが考えられる。そのためにはハミルトニアンを非エルミートに拡張しなければならない。次年度ではこうした非エルミートハミルトニアンにおける局在ー非局在問題も手がけた[未発表]。 (注)引用した文献の番号は「11.研究発表」に対応している。
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