研究概要 |
懸濁粒子の分散および凝集性は臨床医学,食品,化粧品など多くの分野において重要な問題である。これら粒子の浮遊安定性を詳しく調べるためには形成される凝集体の大きさだけでなく凝集過程そのものの測定が必要である。これら浮遊安定性に大きな影響を与える外部因子に温度と並び圧力がある。圧力は近年、食品分野を中心に熱処理に代わる方法として注目を集めている。しかし、測定が困難なことからその研究例は温度に比べて極めて少ない。 そこで本研究ではレーザーの透過光強度の変化より、高圧下で赤血球凝集過程を測定できる装置を製作し、評価した。製作した装置は光源に直線偏光されたHe-Neレーザーを、受光部にはシリコンフォトダイオードを使用した。圧力容器は200 MPa耐圧のステンレス製でサファイア光学窓を2個有する。サンプルセルは市販のプラスチック製の分光光度計用セルで、この中に試料とともに円筒形のテフロン撹拌子を入れた。試料は2%ブタ赤血球の血漿懸濁液を用いた。測定は試料を圧力容器にセット後、1000rpmの強撹拌を4分間行うことにより赤血球を完全に均一に分散させた後、撹拌速度を100rpmに変化させ0.1秒毎に透過光強度の変化を記録した。 赤血球の凝集に伴い、透過光強度は時間とともに指数関数的に増大した。透過光強度の時間変化I(t)は実験式I(t)=A_1{1-exp(-B_1)}+A_2{1-exp(-B_2)}にて良く近似された。凝集速度を表す曲線の初期勾配は大気圧下で2.56×10^<-3>(Vs^<-1>),40MPaの圧力付加により1.43×10^<-2>(Vs^<-1>)と5倍程度増大した。今後さらに、200MPaまでの圧力効果を調べる予定である。
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