研究課題/領域番号 |
09740332
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物理学一般
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
深尾 浩次 京都大学, 総合人間学部, 助手 (50189908)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1998年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1997年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 高分子薄膜 / ガラス転移 / α過程 / 誘電測定 / 温度係数 / 膨張係数 / 誘電分散 / 緩和時間 / 誘電分数 |
研究概要 |
ガラス転移を特徴づける空間スケールについての議論を行うために、本研究では薄膜状態を考え、薄膜内のアモルファス高分子が示すダイナミクス・ガラス転移を誘電測定を中心に調べた。それにより、薄膜状態という空間的な制約がガラス転移のダイナミクスにおよぼす効果が実験的に明らかになり、ガラス転移機構の本質の解明への足掛かりが得られたと考えられる。以下その研究実績の概要を示す。 昨年度はスピンコート法で作成した高分子薄膜のガラス転移温度を電気容量の温度変化により調べ、この手法により、十分な精度で薄膜のガラス転移温度が測定できることを明らかにした。今年度はこの手法を用いて、種々の分子量のポリスチレンに対して、誘電損失の周波数依存性より、α緩和のダイナミクスの膜厚依存性について評価を行った。これにより、高分子薄膜の膜厚の低下とともに、バルク状態で390Kであったガラス転移温度が低下し、5nmでは340Kまで低下することが明らかとなった。また、誘電損失の周波数分散の測定により、ガラス転移温度の低下に伴って、α緩和の緩和時間の分布がブロードになることがあきらかとなった。それに対して、α緩和の緩和時間の絶対値は、ある臨界的な厚みまではほとんど膜厚の低下による変化は見られないが、臨界厚み以下では急激な緩和時間の低下がみられる。このように、緩和時間の絶対値、緩和時間の分布の膜厚依存性と、ガラス転移温度のそれとを比較してみると、薄膜でのガラス転移温度の低下は緩和時間の分布の広がりが主たる原因となっておこっていることがわかった。緩和時間の絶対値が低下をはじめる膜厚はα緩和のダイナミクスが本質的な変化をおこす厚みであると考えられ、このサイズがガラス転移の特徴的な空間スケールに対応していることが期待される。
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