本研究は不均質な土壌中において、吸着反応を伴って移動する物質の移動特性を室内実験により明らかにすることを第一の目的としている。さらに、研究代表者によって提唱されている流れ場の不均質性の統計値から物質の広がりを推定する手法を室内実験に応用し、その妥当性を吟味することを第二の目的としている。 平成10年度は主に室内実験をおこなった。まず、4種類の透水性および吸着特性の異なる砂質土壌試料を一次元カラム4本にそれぞれ充填し、塩素イオンを非吸着性トレーサー、カリウムイオンを吸着性トレーサーとしてカラム-流出実験をおこなった。いずれの媒体においても吸着を伴って移動する物質の流出曲線に、より大きな広がり(分散)が観測された。この吸着性物質に観測された大きな分散は物質流路の微視的な不均質性が吸着場の不均質性と負の相関をもつことが原因と推定された。さらにカラム内の不均質性を大きくするために、種類の異なる砂質試料を層状にカラムに充填してカラム-流出実験をおこなった。媒体の不均質が大きくなればなるほど、非吸着性物質、吸着性物質の分散はともに大きくなるが、吸着性物資の分散係数がより大きくなったことが確認された。以上の結果は流れと吸着に関して不均質な場における物質移動を表す数値モデルによる数値実験結果を支持するものであり、流れ場のみならず、吸着場の不均質性が吸着性物質の大きな分散に寄与していることを示唆している。不均質特性をあらわす統計値と分散係数の定量的比較、関連ずけを現在おこなっている。
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