研究概要 |
西オーストラリ,ピルバラ地塊,ノースポール地域から採集した約3000個の緑色岩試料の顕微鏡観察と系統的な鉱物組成の分析から太古代の海洋底変成作用を明らかにした。 ノースポール地域の付加した海洋地殻は太古代約35億年前の海洋底変成作用の痕跡を残し,プレーナイト-パンペリー石相から,漸移帯をへて,緑色片岩相,緑色片岩相/角閃岩相漸移帯にいたる低圧型の変成相系列に属する。 ノースポール地域のプリューム起源火山岩類と顕生代のオフィオライトを比較した。層序ではノースポール地域でのコマチアイトの出現と玄武岩類の最上位に酸性火山岩が存在することが以外は似ている。変成作用では,いくつかの顕生代のオフィオライトにも見られることであるがノースポール地域では沸石相が欠如している。アクチノ閃石の出現深度は顕生代のオフィオライトでは火山岩類の最上位から約1/4-1/3であるが,ノースポール地域でも同様であることからノースポール地域は元々の火山岩類層の大部分が付加していると考えられる。このことは太古代のプリューム起源火山岩類は,顕生代のオフィオライトと海洋地殻の厚さにそれほど違いはなかったのではないかと考えられる。これは,太古代において海洋地殻が顕生代よりも厚かったのではないかという一般的な説とは異なる結果である。 海洋底変成作用には次の2つのタイプがあると考えられる。一つは中央海嶺起源のAMORM(Archean Mid-oceanic Ridge Metamorphism),もう一つはプリューム起源のAOIBM(Archean OceanicIsland Basalt Metamophism)である。この二つの海洋底変成作用の大きな違いは,関与した熱水の二酸化炭素分圧の違いであり,AOMRMでは熱水の二酸化炭素分圧が比較的高く,AOIBMでは熱水の二酸化炭素分圧が比較的低かったと考えられる。
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