研究概要 |
古生代後期から中生代初期にかけて,パンサラッサ-テチス会合部では様々なタイプの生物岩が繰り返し形成された.とくに礁(広義)には,明瞭な発展,消滅,交替現象が生じている.それらの変遷には,気候・海洋中の栄養塩濃度・海水準変動,生物絶滅現象などが深く関わっている.高次分類群で考えれば,礁構成要素の時代的な質的変化は小さいが,それらの量比や組み合わせが時間・空間的に大きく変化する.中生代生物礁の主要な枠組み形成者である六射サンゴ類は,ペルム紀中期の石灰海綿礁では,礁中の生息者としてのみ存在した.その生存には,ゴンドワナ氷期以降の世界的な温暖化や栄養塩量の増加に起因した,石灰海綿の繁栄ならびに石灰海綿礁の発展が密接に関係したと考えられる. 造礁生物は,避難場所に限りペルム紀最末期まで生き延びたが,絶滅事変直後には,生息環境を問わずバクテリアが主体の礁が形成された.その後,生物群の回復は,遠洋域と浅海域でほほ同時に生じたが,その様式には,絶滅事変と同様の顕著な地域性や種族特異性が認められる.ペルム紀末の絶滅現象は,単に一方的な礁生物群の系統的な断絶を導いたのではなく,礁構成要素の交替や新たな生物間相互作用に大きな役割を果したと考えられる. これらの結果は,古生代後期から中生代初期における,パンサラッサ-テチス会合部での地球環境ならびに生物群の変遷との相互作用を考える上で極めて重要である.回復期(生残り期)の生き残り戦術や避難場所の性質の解明は今後の課題である.
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