研究概要 |
三郡砂質片岩は大陸地殻起源物質が堆積し変成作用を受けた岩石で,副成分鉱物としてジルコンを含む.ジルコン中のウランとウランが壊変して生じた鉛を定量すれば,その結晶化した年代がわかる.ジルコンが晶出する岩石は花崗岩のような酸性の火成岩に限られる.ジルコンは物理・化学的風化作用の影響を受けにくく,堆積岩そして変成堆積岩に含まれるジルコンから,その供給源の岩石種や晶出年代を知ることができる. 九州北部に分布する三郡砂質片岩は主に19〜20億年の年代を示す砕屑性ジルコンを含む.この結果は2億年前に変成した三郡砂質片岩が19〜20億年前の花崗岩を中心とした大陸地殻を供給源に持つことを示す.供給源として考えられる韓国の先カンブリア紀の変成岩中のジルコンも19〜20億年の年代を示した.しかし韓国産のジルコンも形態的特徴から砕屑性だと考えられ,この岩石は三郡変成岩と同じ供給源を持つ変成堆積岩だと考えられる.三郡変成岩についてジルコンのウラン-鉛年代の測定を続けた結果,山陰地方の異なる2地域から19〜20億年の年代を定義するジルコンが得られた.この結果,ほとんどの三郡砂質片岩は19〜20億年前の大陸地殻を供給源に持つと考えられる.隠岐に産する飛騨片麻岩からも同じ年代を示す砕屑性ジルコンが産するため,日本列島をはじめとする東アジア縁辺域において,大陸地殻の成長の中心となる地質体を構成するに至る物質は19〜20億年前の大陸地殻を供給源に持つと考えられる.ジルコンのほとんどは19〜20億年を定義し,日本に関しては5億年より若い物質のみが報告されており,その間の年代学的報告例は少ない.最近の報告では7〜8億年前より太平洋が形成を始めたと解釈されており,そのことと併せて考えると,太平洋が拡大を初め日本が形成を始めるまでの数億年間は今の南米東部やアフリカ西部の様な非活動的大陸縁辺域に大陸地殻物質が堆積し,その後の造山活動により日本の中核をなす地質体が形成されたと考えられる.
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