研究概要 |
群馬県草津白根火山周辺,兵庫県栃原,北海道小樽産出の計6つのアルナイト試料のランタノイド濃度を定量したところ,そのランタノイド元素パターンは産地に依らず軽ランタノイドに富む類似な形状を示した.これはアルナイトの生成過程において,アルナイト特有のランタノイド分別メカニズムが存在していることを示している.パターンを詳細に見てみると,軽ランタノイドでは左上がり,重ランタノイドでは平坦なパターンを示し,軽ランタノイドから重ランタノイドにかけてパターンの不連続が認められる.また,軽ランタノイドにおいては試料間で微細な形態の差異が認められる. 軽ランタノイドと重ランタノイドとの間にパターンの不連続が存在することは,軽ランタノイドと重ランタノイドとでアルナイト生成過程での分別メカニズムが異なっていることを示している.また,軽ランタノイドにおける試料間の差異は,主成分として含まれるアルカリ金属の割合に依存しており,カリウム濃度と軽ランタノイド濃度との間に正の良い相間が認められている.これらの事実は,アルナイトの生成過程に軽ランタノイド-カリウム-硫酸複塩が介在している可能性を示唆している. さらに,アルナイトの変質母体であると考えられる長石を基準にしてランタノイド元素規格化パターンを得ると,リンに富む試料においてはセリウムからプラセオジムで上に凸の頂点を持ち,リンに乏しい試料ではネオジムで上に凸の頂点を持つ.ここでリンに富む試料における頂点の位置はカルシウムのイオン半径にほぼ相当し,アルナイト中で軽ランタノイドの一部がカルシウムとリンを含むアルナイト類似鉱物であるCrandaliteに取り込まれていることが考えられる.
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