研究概要 |
衝突エネルギーが数100eV以下の低エネルギー領域における低速イオンと固体表面の相互作用に関して、総合的かつ基礎的な知見を得るための方法論の開発を行った。7.6Kに冷却した清浄なSi基坂上に、0.1〜数分子層で制御された原子・分子薄膜を真空蒸着法で形成し、400eVのHe^+イオンで衝撃した。二次イオン強度の膜厚依存性、衝突エネルギー依存性などを検討し、 1) スパイク領域における電荷移行反応と二次イオン収率・脱離収率の相関、 2) エネルギー緩和過程と薄膜固体のV_0値(固体の電子親和力)の相関、などに関する知見を得た。 薄膜固体としては、希ガスRg(Ar,Kr,Xe)、窒素、酸素、および一酸化炭素などの単一種薄膜や、これらの積層膜 および任意の割合で混合した混合薄膜を用いた。「垂直イオン入射、垂直イオン引き出し法」が可能な、飛行時間型質量分析計で質量分析した。希ガス薄膜固体中のホールやエキシトンの拡散長は、Ar<Kr<Xeの順に長い傾向があり、二次イオン生成において、多価イオン(Rg^<2+>)や励起種(Rg^*、Rg^<+*>)の寄与が大きい事が分かった。また、負のV_0値を持つ酸素薄膜の方が窒素薄膜(V_0>0)に比べ二次イオンの生成のスパイク領域が大きいことが分かった。
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