研究概要 |
核磁気共鳴(NMR)法を用いる蛋白質の構造解析において側鎖の位置・立体選択的重水素標識は極めて有効であり、帰属の確定したプロキラルな水素、メチル基などのシグナルをプローブとして結合定数、NOEなどの構造情報を抽出することが可能である。しかし、アミノ酸のαおよびβ位の不斉重水素標識が比較的よく研究されているのに対し、γ位以降の選択的重水素標識に関する報告は殆どない。本研究では重水素標識ピログルタミン酸誘導体をキラルテンプレートとして用いる長鎖アミノ酸の不斉重水素標識を目的とした。 昨年度の検討により、4-ヒドロキシプロリン1を出発原料とする重水素標識ピログルタミン酸の合成および[3,4-D_2]グルタミン酸、[3,4,5-D_3]プロリンへの変換を達成した。本年度はメチル基やシアノ基の導入によるロイシン、リジンの合成を検討した。化合物1から容易に誘導可能な4-オキソプロリン2のエノールトリフラートと有機銅試薬とのカップリング反応により立体選択的にC-4へメチル基を導入した後、オレフィンの重水素化、C-5の酸化はより4-メチルピログルタミン酸誘導体3を合成した。ラクタム3を開環した後、末端カルボキシル基を還元的に重水素化することにより[3,4,5,5,5-D_5]ロイシンを合成した。一方、末端カルボキシル基の官能基変換の際、ヨウ化ノルバリン誘導体を経由することを利用し、シアノ化および水素添加を行い[3,4-D_2]リジンを合成することに成功した。
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