研究概要 |
アミド基を持つフェロセン誘導体、[Fe(C_5H_5)(C_5H_4NHCOR)](R=CH_3,t-Bu,CF_3)を1電子酸化し、フェロセニウムカチオン誘導体を得た。水素結合能は中性分子に比べ増加し、チオラート錯体と組み合わせた[Fe(C_5H_5)(C_5H_4NHCOCH_3)][Ni(nmt)_2]は単位格子中に独立な8つの分子を持つ特異な結晶となり、低温で一部が反磁性的に相互作用し形式上S=7/8の常磁性を示した。また、新たな試みとして、アミド基を2つ非対称に導入した、[(CH_3CONHC_5H_4)-Fe(C_5H_4NHCOCH_3)]やそのオリゴマーである[(CH_3CONHC_5H_4){Fe(C_5H_4CONHC_5H_4)}nFe-(C_5H_4CONHCH_3)](n=1,2)を単離し、n_6についてはESI-MSにより検出した。このようにフェロセンを主鎖に持つ非天然型アミノ酸[(NH_2C_5H_4)Fe(C_5H_4COOH)]による有機金属ペプチドの合成に成功した。このペプチドは低極性溶媒中や固体状態でアミド基が互いにスタックした特異な構造を示すことを、X線構造解析、IR、_1HNMRにより明らかとした。さらにこのアミノ酸を天然型アミノ酸と組み合わせ新規ベータシートモチーフを合成した。このような2次構造形成可能な全く新しいタイプの有機金属ペプチドは、その可逆な酸化還元電位などを応用した電導性物質の開発などさらなる応用が期待できる。
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