研究概要 |
カルバゾールとテレフタル酸メチルをメチレン鎖(鎖長:n)によって連結した化合物(CnT)は、分子間光誘起電子移動によりエキサイプレックス(Exp)蛍光を発する。外部電場を印加した状態で試料の蛍光スペクトルおよび蛍光減衰曲線を測定し、電場が電荷移動状態に与える影響を検討した。カルバゾールの励起状態をテレフタル酸メチルが消光して生じるラジカルイオン対は、メチレン鎖に応じた双極子モーメントを持つことが期待され、外部電場がそのエネルギー準位を安定させることにより、カルバゾールの蛍光寿命も変化することが予想される。そこで、蛍光スペクトルならびに蛍光寿命の変化を直接測定することによって、外部電場が及ぼす励起状態からの緩和過程の動力学を明らかにすることを目的とした。PMMAのベンゼン溶液に溶かしたCnT(n=2,4,12)を、アルミ電極を蒸着した石英基板上にスピンコートしたのち、さらにアルミ電極を蒸着して、測定試料とした。CnT濃度はMMAユニットに対し、1,2,5,10mol%の4種類を用意し、アルミ電極にリード線を付け、蛍光分光器ならびに自作した蛍光寿命装置を使い、電場蛍光スペクトルおよび電場蛍光スペクトルを測定した。蛍光寿命の外部電場による変化は微小なので、外部電場を矩形波で印加し、電場の無印加時と印加時の蛍光寿命の差を取った。C2Tは外部電場により、カルバゾールモノマー部位(Cz)の蛍光寿命は変化しなかったが、C4TとC12Tでは蛍光寿命が減少し、外部電場によってCz^*の蛍光消光速度定数が増加することが分かった。定常光の電場蛍光実験では、C4TとC12Tの場合、外部電場印加によって、Cz^*の蛍光強度が減少することから、これが蛍光消光速度定数の増加に起因していることを明らかにした。一方、C2Tの場合、定常光実験ではCz^*が増加していたことから、一度生成したエキサイプレックスが外部電場によって解離し、再びCz^*が生成することを電場が促進していると理解される。以上の成果は、今回製作した装置で始めて明らかにされた。
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