研究概要 |
昨年度までに、5シェル構造の単分散Pd超微粒子(25Å,Magic number=561)に、Pd原子561個に対しNi原子を1〜561個の範囲で順次析出させ磁気測定を行った結果、析出Ni量の増加に伴う巨大磁気モーメントの増大が観測され、巨大磁気モーメントの誘起が超微粒子のバンド構造変化と密接に関係すると考えられた。本年度は、5シェル構造のPd超微粒子にCo原子を順次析出させ、希薄Pd-Co超微粒子を合成するとともに、Co原子により誘起される巨大磁気モーメントの大きさを検討することに焦点を当てた。ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)存在下、エタノール/水(1/4,v/v)中でH_2PdCl_4を還元し25ÅPd超微粒子を合成後、溶媒を留去し1-プロパノールに再分散させた。次に、CoCl_2・6H_2Oの1-プロパノール溶液を加え凍結脱気後、窒素気流中で還流することによりCo^<2+>を還元し、Pd超微粒子にCo原子を析出させた。Pd-Ni超微粒子では、仕込んだNi^<2+>がほぼすべて還元されたのに対し、Pd-Co超微粒子では仕込みのCo^<2+>の40〜60%が還元された。結果として、Pd原子561個に対しCo原子を1〜20個の範囲で順次析出させることに成功した。Pd超微粒子不存在下ではCo^<2+>の還元は進行しないことから、Pd超微粒子がCo^<2+>還元の触媒となっていると考えられる。これらの希薄Pd-Co超微粒子の平均粒径および標準偏差は、単分散Pd超微粒子のものとほとんど変わらず、いずれも23〜24Å平均粒径を有していた。 SQUID装置を用いてPd-Co超微粒子(561/12,561/20)の磁気モーメントを測定したところ、Pd-Ni超微粒子と同様にCoによる巨大磁気モーメントが観測され、析出Co量の増加に伴い磁気モーメントの増加がみられた。現在、さらにCo含量の多いPd-Co超微粒子の磁気測定およびキャストによる磁性薄膜への展開について検討中である。
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