研究概要 |
種々の合成両親媒性化合物のクロロホルム溶液をグラファイト基板上に滴下し、乾燥させた。この基板の原子間力顕微鏡観察を行って、固体基板上における分子組織化挙動について検討した。その結果、アンモニウム親水基を有し、かつ3個のアミド基を有する脂質がグラファイト表面上に三回対称を有するエピタキシャル結晶化することを見いだした。このエピタキシャル結晶の幅は35-45nm,長さは180-300nmであり、また結晶の厚みは、クロロホルム溶液の濃度に依存して変化し、一分子厚み(0.3-0.6nm)のエピタキシャル結晶を作製することも可能であった。次に、グラファイト上のエピタキシャル結晶を脂質の融点以上にまで加熱し、ついで徐冷することによる構造変化について調べた。加熱処理を施すことによって、長さ2500nm以上,幅40-55nmのテープ状超構造がグラファイト表面に配向することが明らかとなった。このことは、脂質がグラファイト表面に平行に一分子厚みの二分子膜として自己組織化することを意味する。 さらに、アルキル鎖長の異なる類似のアンモニウム脂質について同様の原子間力顕微鏡観察を行ったところ、アミド基のみならずナフタレン発色団のように分子間力を増大させる構造要素があれば、グラファイト基板上におけるエピタキシャル結晶化、ならびに加熱処理による二次元メゾスコピック構造への構造変化がおこることが確認された。本手法は簡便な操作により任意の基板上に分子的厚みの超分子パターンを構築できることから、分子建築の基礎を与えるものである。
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