研究概要 |
光学活性な軸配位子萎添加することによりアキラルなサレンマンガン錯体の立体配座を制御し不斉エポキシ化を行うという今回の研究で、これまでに(-)-スパルテイン(1)や(S)-3,3'-ジメチル-2,2'-ビキノリンN,N-ジオキシド(2)等がキラルな軸配位子として有効であることを見いだした。しかしながらアキラルなサレン錯体に対して過剰量の1や2を用いる必要があるなどの点で、所記の目的を達成することが困難であった。キラルな軸配位子によるサレン配位子のコンホメーションの規制の強さは、軸配位子-サレン錯体間の相互作用と軸配位子の配位し易さに依存していると考えられる。 そこで本年度は、2よりサイズが小さく配位力が強いと期待されるキラルな3,3'-ジメチル-2,2'-ビピリジンN,N-ジオキシド(3)を軸配位子として不斉エポキシ化を検討した。6-アセチルアミノ-2,2-ジメチル-7-ニトロクロメン(4)を基質として反応条件の最適化を行った結果、アキラルなマンガン(III)3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-N,N-エチレンビス(サリチリデンイミナート)錯体を4mol%と3を5mol%用いてジクロロメタン中-20℃で酸化を行うことにより目的のエポキシドを化学収率65%および不斉収率82%eeで得ることができた。さらに、4以外のクロメン誘導体の不斉エポキシ化においても良好な化学収率および不斉収率を達成した。以上の研究から、不斉要素を持たないサレン錯体でも、キラルなサレン錯体と同じレベルの不斉誘起が可能であることを明らかにすることができた。以上の結果は現在投稿中である。
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