研究概要 |
油/水,水/油エマルション中における不均一系の化学反応機構や界面現象一般を理解する上で重要な,微小液滴/溶液界面で起こる化学プロセスを明らかにするため,光学顕微鏡下でマイクロピペットを用いた操作により,水相中に単一油滴のみ存在する系を形成し分析できる手法開発を検討した。 平成10年度の研究代表者の異動に伴い,マニピュレーション用レーザー,分光装置,顕微鏡が使用できなくなったので,電気化学装置(現有)とレーザー以外の装置を新たに購入し,測定システムの構築を行った。レーザーの代わりには,顕微受精・遺伝子操作などで用いられているマイクロマニピュレータを用いた。マイクロピペット操作により、水溶液中で単一油滴を微小電極上に接触させ電気化学測定できるシステム開発を行い,電気化学的に油滴中に生成したフェロセニウムカチオン誘導体の油滴/水界面を経由した物質移動過程を,単一油滴のサイクリックボルタモグラムの掃引速度,油滴サイズ,液間電位差依存性から議論した。また,電気化学測定のみでは検討できる化合物が限られるので,顕微鏡下で単一液滴の吸収スペクトル測定が可能なシステムの開発を行った。マイクロマニピュレーション・顕微分光・微小電気化学システムの開発により、電気化学・分光学的にマイクロメートルサイズの単一液滴/溶液界面における物質移動過程を議論できるようになり,エマルション系の新しい分析手法としての有用性を示すことができた。
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