遺伝学的手法によるアブシジン酸のシグナル伝達因子の検索 申請者が分離したABA欠損突然変異株(EN7株)は、速中子線照射により突然変異を誘発させたものであり、一塩基置換よりも欠失・転座などによる突然変異が生じやすい。そのために、このような突然変異株はエチルメタンスルホン酸処理することにより復帰突然変異株を分離するのに適している。本研究では、EN7株を用いて復帰突然変異株のスクリーニングをおこなうためにEN7株の詳細な遺伝学的解析をおこなっている。まず、EN7株(Columbia系統)と異なる系統の野生型株(Ler系統)をかけあわせて得られたF2植物を用いてマッピングをおこなったところ、EN7株が有する突然変異(aba2-2突然変異)は第一染色体の中央部m213とPAP240の間約3cMに位置していることが分かった。さらに詳細にマッピングをおこなうために約500株のF2植物を用いて、m213とPAP240領域の中で組み換えをおこしたラインを9株得た。シロイヌナズナの3cMは約600kbに相当すると見積もれるので、この9株の組み換え体はこの約600kbの領域を10に分割すると考えられる。現在はPAP240を含むYACクローンを2クローン得ており、これらクローンを染色体上のマーカーと対応付ける事によって整列クローンの作製をおこなう予定である。aba2-2突然変異部位の同定は復帰突然変異株の分離のみならず、ABA生合成調節を理解する上で重要であろう。
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