研究概要 |
突然変異を誘発したシロイヌナズナ集団に対して、胚軸からの不定根形成を指標とする大規模なスクリーニングを行い、1,000近い数の温度感受性変異体候補株を選抜した。このうちの約半数について二次スクリーニングを行った結果、これまでに35系統の温度感受性変異体を新規に単離することができた。 温度感受性突然変異体srd2、rrd1、rrd2、rrd4を用いて、不定根および側根形成の解析を行い、以下の成果を得た。制限温度下でsrd2変異体の胚軸あるいは根の断片を培養した場合、胚軸外植片では細胞増殖が起きず根の原基(不定根)も形成されなかったが、根外植片では根の原基(側根)が形成された。制限温度下で形成された根の原基には分裂組織が構築されず、原基全体で細胞増殖が持続して瘤状の細胞塊となった。rrd1およびrrd2変異体の場合は、制限温度下での培養により帯化根の形成頻度が上昇した。これらの結果は、SDR2が増殖能レベルの励起に関与しており,増殖能をもたない胚軸組織での増殖能獲得、分裂組轡形成に先立つ増殖能の再励起に必要であること、分裂組織がそれ以外の部分での細胞増殖を抑制していること、RRD1とRRD2が増殖活性全般に関わっていること、原基あるいは分裂組織の形成に際して増殖活性の低下は増殖域の限定化を弱めること、を示唆する。また、rrd4変異体に関しては、サイトカイニン存在下で増殖能獲得段階が温度感受性を示すことが明らかとなった。 srd2変異体胚軸由来カルスに対して野生型ゲノムDNAライブラリーを無作為に導入することによる、SRD2遺伝子のショットガンクローニングを数次にわたって試みた。SRD2遺伝子の導入によって変異形質が相補された可能性のあるカルスが得られたこともあったが、最終的な成功には至らなかった。しかしながら、実験の中で問題となる形質転換効率と作業効率については大幅に改善することができ、本法の実用化にはある程度の目途が立った。
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