研究概要 |
Energy-consuming structure(紡錘体、隔膜形成体)近傍へのミトコンドリア定位の機構解明へ向けて ミトコンドリアが,紡錘体,隔膜形成体といった分裂装置近傍に定位されることが多くの植物細胞で観察されてきたが,その機構については明らかにされてこなかった。本研究によって、上述のミトコンドリア定位は,G2期に、細胞中央に定位された核の周辺領域にミトコンドリアが集積することによるものであることが、まず、明らかにされた.G2期に、ミトコンドリアが核周辺領域に集積するためには、細胞質表層領域から核に向けて、ミトコンドリアが移動することが求められる。この移動には、細胞質表層領域と核を結ぶアクチン繊維、もしくは、微小管が関与する可能性が考えられた。そこで、細胞内のミトコンドリアの挙動を分析し、その挙動にアクチン繊維破壊剤や微小管破壊剤がいかに影響するかを調べたところ、ミトコンドリアの移動は、アクチン繊維依存的であり,微小管非依存的であることが明らかになった。従って、ミトコンドリアの移動にはミオシン等のアクチン系モーター蛋白質が働く可能性が高い。アクチン繊雑依存的々仕組みでミトコンドリアの移動が起こったとするならば、移動後、ミトコンドリアの配置はいかにして保たれるのか。この問いに答えを与えうる興味深い観察結果として、微小管破壊によって糸状ミトコンドリアの消失が起こることが示された。この結果は、微小管が糸状ミトコンドリアの形状を保つ支持体の役割を果たしている、もしくは、微小管を足場として粒子状ミトコンドリアから糸状ミトコンドリアへの変化(融合)がおこると考えることによって説明されるので、一部のミトコンドリアは微小管を足場として分布している可能性が考えられる。この可能性を検討する為に、現在、細胞内,試験管内におけるミトコンドリアと微小管の結合を解析している。もし、ミトコンドリアが微小管を足場として分布しているならば、微小管は、特定の位置に移動したミトコンドリアを、その場所に固定するための構造として働いているものと捉えることができ、ミトコンドリア定位機構に関する新しいモデルを提唱することが可能になる。 一方,本研究により,ATP感受性を示す微小管結合ドメインをもつキネシン様蛋白質TBK10が、ミトコンドリアの外膜細胞質側側面に附随することが免疫電子顕微鏡観察によって明らかになった。この結果は、ミトコンドリアが微小管と相互作用する可能性を支持しており、TBK10が“detachable-mictochondria-anchoring protein"として機能しているとする仮説を提示することができる。
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