研究概要 |
我々は昨年度までに、シロイヌナズナ培養細胞(T87)を用いた解析により、低温により一過的にMBP(myelinbasic protein)をリン酸化する活性が上昇することを明らかにしてきた。また、シロイヌナズナ植物体を用いた解析により、低温、乾燥(湿度変化)、傷害ストレス処理により一過的にMBPをリン酸化する活性が上昇することを明かにし,低温、乾燥(湿度変化)、傷害ストレスの情報伝達系にMAPキナーゼが関与する可能性があることを明らかにしてきた。そこで、シロイヌナズナの植物体に低温乾燥(湿度変化),傷害ストレス処理を行い,プロテインキナーゼ活性の変動を検出し,検出されたプロテインキナーゼ活性がMAPキナーゼによるものであることを、我々がすでに単離したMAPキナーゼATMPKl-9に対する特異的抗体を用いて検討した。シロイヌナズナの植物体に低温,乾燥(湿度変化),傷害ストレス処理を行ったときに検出されるMBPリン酸化活性は、抗リン酸化チロシン抗体及び抗ATMPK4抗体により免疫沈降された。我々が作製した抗ATMPK4抗体は他のシロイヌナズナMAP kinase(ATMPKl.ATMPK3.ATMPK8)を認識せず、ATMPK4のみを強く認識しうる特異性の高い抗体であることも合わせて確認した。また、ATMPK4の活性化因子の候補としてMEK及びATMKK2(MAPキナーゼキナーゼ)を、MEK及びATMKK2の活性化因子の候補としてATMEKKl(MAPキナーゼキナーゼキナーゼ)を、酵母two-hybrid system及び酵母の突然変異体の機能相補試験により同定した。以上の結果は、これらのキナーゼがMAPキナーゼカスケードを構成している可能性があること、このキナーゼカスケードが高等植物シロイヌナズナの低温,乾燥(湿度変化),傷害ストレスの情報伝達系に関与していることを強く示唆しているものと考えられる。
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