研究概要 |
1 培養株の収集・確立 これまで国内における磯採集や内外の研究施設からの送付により8目14種の紅藻培養株を入手し,研究室において単藻培養株を確立した.有性生殖(受精)が確認されている12目の紅藻のうち、7目10種の雌雄両方あるいはいずれかの配偶体が得られている中で,成熟し,不動精子あるいは卵細胞を形成を確認しているものは,ダルス,カギノリ,フタツガサネ,ヨツガサネ,キヌイトグサの一種,カザシグサ,ササバアヤギヌの3目7種である. 2 形態学的および組織化学的観察 特徴的な付属枝を持つことが知られているフタツガサネAntithamnion nipponicum不動精子の被膜・付属枝の詳しい形態を,共焦点レーザー顕微鏡,透過型及び走査型電子顕微鏡を用いて観察した.精子の表面には組織化学的性質の異なる内層と外層からなる無色の被膜が存在することが初めて示された.被膜内層から長さ80ミクロンに達する2本のリボン状付属枝が伸長し,長軸方向に配列する微細な繊維が多数編み合わせられて一本の付属枝を構成することが明らかになった.精子形成過程において,精子細胞の外に形成される精子被膜は,その形成初期において放出後にみられる組織化学的性質を有していた.付属枝は精子細胞内部の2個の小胞中に形成され,そのリボン状の形態や組織化学的性質は精子の成熟に伴って徐々に現われるようになった.放出後の精子を雌性配偶体に媒精すると,精子は藻体や毛状葉,受精毛の表面に付属枝を介して,あるいは巻き付けた状態で接着した.
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