研究概要 |
前年度はCaF_2上に自然形成法によって形成される高密度のGa液滴にAs分子線を供給することで高密度のガリウム砒素(GaAs)の量子ドット構造を作製し,本構造からのフォトルミネッセンス(PL)を確認した.本年度は光デバイス応用のため,ドット構造のPL強度を増大させることを目的とした. 結晶性の向上のため,Si(111)基板上にMBE成長した膜厚20nmのCaF_2表面に基板温度を室温以下に冷却し,Ga分子線を供給して高密度のGaドット構造を自然形成させた後の,GaAs化のプロセス温度を450℃から600℃に増加させた.600℃にプロセス温度を上げた結果,6×10^<11>cm^<-2>存在したドットが,7×10^<10>cm^<-2>に減少するが,CaF_2のステップエッジに沿ってGaAsが再配列した結果,個々のGaAsドットのサイズが比較的均一になることがわかった.この後,表面の欠陥をパッシベーションするために再び300℃でCaF_2を再成長させ,700℃で短時間アニールを行い,ドット構造をCaF_2膜中に埋め込んだ試料のPLを温度77Kで評価したところ、埋込GaAsドット構造からの発光と考えられるPLを観測した。ピーク発光波長は約720nmであり,比較用に作製した5nmの井戸幅をもつGaAs/Al_<0.3>Ga_<0.7>As量子井戸構造からの波長よりも短波長側にシフトしており,PL強度も量子井戸からのそれの1/4程度と比較的高いものが得られた.おおよそ10nmという構造寸法もさることながら,周囲をCaF_2という広いバンドギャップをもつ材料で埋め込んだことによる,束縛エネルギーおよび電子の状態密度の増加が顕著に現れた結果と考えられる.本構造が光デバイスに応用可能であることを示した.
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