研究概要 |
周波数安定化された半導体レーザ光の注入による光ファイバレーザの発振周波数の安定化・制御・狭スペクトル線幅動作実現のための新手法の確立およびその性能の評価が目的である。 本年度は、可飽和吸収体を組み込んだリング形およびサニャックループ形エルビウム添加光ファイバレーザを対象として、性能評価を試みた。得られた成果は以下のとおりである。 1. リング形ファイバレーザの発振周波数制御実現の可否要因の探求 発振周波数制御の可否と、共振器の構成の関係を調べるために、A(共振器長20.7m,吸収体長1.2m)とB(共振器長17.5m,吸収体長0.5m)、C(共振器長18.2m,吸収体長1.2m)の三種のレーザ共振器について、周波数制御特性を測定した。その結果、吸収体長が短いB以外の共振器では周波数安定化が可能となり、吸収体長中において発振光と制御光が十分干渉を起こすことが重要なことが明らかとなった。一方、周波数変動についてAとCを比較したところ、Cの方が変動がより低くなり、短共振器化、すなわちレーザ共振器の縦モード間隔を大きくすることにより安定性を改善できることが明らかとなった。 また、外部注入光波長の、自由発振状態の波長からの離調の大きさに周波数安定度が大きく依存し、離調が増大するにつれて周波数安定度が低下することも明らかとなった。 2. サニャックグループ形光ファイバレーザの特性 偏波保存光ファイバによって光増幅器を組み込んだサニャックループ形ファイバレーザを構成し、ループ中への外部光の注入によって引き起こされる利得媒質の飽和を利用したファイバレーザの周波数制御を試みた。しかしながら周波数制御は未だ実現を見ていない。これは、外部注入光の入射時の偏波状態の不安定性に大きな原因があり、実験系の改善が望まれる。
|