研究概要 |
本研究は,通常流体機械に損傷をもたらすキャビテーションを,キャビテーション噴流を用いて制御して機械材料表面に直接的に耐食性不動態層を生成して,その不動態層を定量的に評価することを目的としている。本年度は,平成9年度の研究成果を踏まえて,耐食性不動態層の生成および評価について以下の研究を実施した。 1. 耐食性不動態層の評価 耐食性不動態層の程度を示す物理量として,イオン交換水中での腐食電位を用いることを見出し,キャビテーション噴流にさらした試験片の耐食性を評価した。また試験片表面をカラーフィルムで光学顕微鏡撮影し,そのネガから設備備品費で購入したフォトスキャナによりデータを入力して画像処理し,耐食性向上を評価した。 2. 最適加工条件の確立 キャビテーション噴流による耐食性不動態層の生成に及ぼす因子の把握および,最適加工条件の確立を目的として,種々の条件のキャビテーション噴流を炭素鋼表面に噴射して不動態層を生成し,上記のイオン交換水中の腐食電位を耐食性を表す指標として,不動態層の耐食性を評価した。その結果,不動態層は,キャビテーション係数(ノズル下流側圧力とノズル下流側圧力の比),スタンドオフ距離(ノズルと被加工面までの距離),被加工面上での噴流軸中心からの距離,噴射時間などにより変化し,それぞれ最適値が存在することを明らかにした。また設備備品費で購入した純水用電気伝導率計を用いて水質をモニタし,水質の影響も調べた。メカノケミカル的な観点から,キャビテーション衝撃力を自作したセンサにより計測して,衝撃力と耐食性向上の関係を明らかにし,残留応力の計測も行った。
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