研究概要 |
本研究ではリサイクル容易なPP/LCP系ポリマーブレンドに注目し,その強度特性,特に疲労に及ぼすブレンドと圧延加工の複合効果について検討した.実験用試料は汎用結晶性高分子ポリプロピレン(PP)に分子配向性が発現する高強度液晶ポリエステル(LCP)を20%添加し,射出成形によりブレンド試験片を作成し,更にこの試験片に圧延加工を加えた.そのブレンドと圧延加工が材料内部の微細構造と疲労特性にどのような影響を与えるかを調べた結果は次のとおりである. 1) PP/LCPブレンドは非相溶系であり,補強材とするLCP相が射出成形方向に沿ってPPのマトリックスに棒状の形で分散していた. 2) 圧延加工を行うと,tanδの上昇(E'の低下)を示し,試料全体が軟化されることが認められた. 3) LCPの添加により耐疲労破壊特性がかなり改善できるが,試料の引張強度(Tg以上の試験温度)の向上はあまり期待できない.特に伸びはかなり低下した.しかし,圧延加工を加えると,伸びが再び回復し,高圧延率では引張強度も上昇している. 4) 圧延した試料は疲労初期段階に自己発熱が生じ,tanδの上昇とE'の低下が観察された.低圧延率の試料はより発熱し易く,寿命も短いが,高圧延率の試料は繰り返し負荷の下で試料が伸びると共に分子の配向が向上するため,tanδの低下とE'の上昇が生じて,耐疲労性が増大した.つまり,外部負荷に対応した一種の強化と言える特性を持っていることが分かる. 5) 低温において繰り返し負荷を受ける場合,高圧延率のブレンド試料は補強材(LCP)とマトリックス(PP)の両単体よりもはるかに長い疲労寿命を示す. 以上のように高強度PP/LCPブレンド材を創製するにはLCP相の均一分散と微細繊維化が大切であるが,40%以上の圧延によりマトリックスPPとLCPの分子配向性を向上させることも重要である.また,圧延したブレンド試料は高温より低温強度の方が優れている.
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