研究概要 |
本研究は、反応性スパッタリング法による窒化物薄膜作製プロセスを精密に制御すること、および外部磁場によってグロー放電プラズマを収束し成長中の薄膜へのイオン照射を行うことにより良質な薄膜を成長させることを目指したものである。このうち、プロセス制御システムについては昨年度に完成済みである(日本金属学会誌,第61巻,第10号)。 本年度は、まず、確立したプロセス制御法を用いて、種々のAr分圧および窒素分圧下でTiターゲットを直流、高周波スパッタリングすることによってTiN薄膜を作製し、それらの内部応力、抵抗率、結晶構造解析を行った。その結果、どちらの場合も、窒素分圧を10^<-3>Pa台とすると単相のTiN結晶薄膜が成長するが、高周波スパッタリングの方が緻密で低抵抗率を示す良質な薄膜を得やすいことが明らかとなった。この原因としては、高周波スパッタリングの場合には、基板に降り注ぐイオン流束が直流スパッタリングの場合より1桁程度多いことが原因と考えられた。この結果から、外部磁場を用いてスパッタリング時のグロー放電プラズマを収束させて基板へのイオン流束を増やせば、直流スパッタリングにおいても良質なTiN薄膜を成長させることができると考えられた。磁場の印加実験の結果、イオン照射量(電流密度)が抵抗率に及ぼす影響は意外に少なく、照射するイオンのエネルギーを大きくする方が有効であることが明らかとなった。これらの成果は、国際会議(14th International Vacuum Congress,Birmingham,1998)および日本金属学会(1998年秋期大会)において口頭発表した。
|