研究概要 |
本研究は、塑性加工における製品表面性状のトライボロジカル制御技術の確立(金型寿命予測、潤滑油試験法、計算シミュレーション境界条件の定式化)を最終目的とする基礎研究の一部である。具体的には、バルク塑性変形を伴う金属加工表面における平滑化の問題について、潤滑条件に伴い変化する金属材料の塑性流動状態や表面性状の変化及び潤滑油性状などがどのように寄与しているか、加工中の被加工材料の工具面への凝着現象がどのような条件で発生するか等を実験により詳細に検討し、表面性状と材料変形機構の間に特定の関係を見いだす事を目的とする。 試作した片側平面押出し加工装置を使用して平面ひずみ冷間押出し加工実験を行い、塑性加工により形成された表面性状に潤滑油の高圧粘度特性が及ぼす影響を調べ、その評価方法を検討した。被加工材に純アルミニウム1050Aを、試験油に分子構造の異なる4種類の潤滑油(市販トラクション油、ナンテン系基油、パラフィン系基油、流動パラフィン)を用い、潤滑油の種類と表面面圧が金型変形領域内の表面形成状態にどの様な影響を及ぼすかを調べるために、押出し比を2,3,4の3通りで実験を行った。押出し荷重に対しては、高面圧になる場合、押出し荷重に潤滑油のトラクションの影響が生じ、トラクション係数の大きな潤滑油ほど、押出し荷重も大きくなることがわかった。表面粗さ解析からは、最大山高さRpと算術平均線粗さRaとの関係が潤滑油によって異なること、ナフテン系とパラフィン系といった分子構造の違いが明確に現れることがわかった。また、画像解析により潤滑油の違いによる被加工材の表面性状の違いを表面のへこみ部に着目して整理したところ、表面粗さ解析と同様にナフテン系とパラフィン系で表面の特徴を分類できることがわかった。
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