研究概要 |
誘電緩和挙動と力学的な緩和挙動の類似性を利用し,誘電緩和測定より得られる緩和時間の温度-圧力依存性から,極性合成潤滑油の高圧レオロジー特性の予測を試みた. 誘電緩和測定は,大気圧下において温度を変化(200〜293K)させた場合と,室温付近の温度において圧力を変化(0.1〜700MPa)させた場合の二通りを,周波数範囲100Hz〜1.5MHzで実施した.ポリフェニルエーテル,フタル酸ジオクチル,リン酸トリクレジルおよびポリプロピレングリコールに対して,誘電緩和曲線は測定を行なった温度,圧力の範囲において時間-温度-圧力の重ね合わせが適用可能であった.緩和時間の温度,圧力依存性を解析した結果,Vogel-Fulcher-Tammann(VFT)式の特性温度を,ガラス転移温度の圧力変化を表す関数で表現することにより,測定結果と良く一致する緩和時間-温度-圧力関係式を得ることができた. 製作した回転粘弾性測定装置により測定した大気圧下の定常流粘度を基準とし,緩和時間-温度-圧力の関係式と体積弾性係数の圧力変化を表す式を組み合わせることにより算出した高圧粘度は,落球式高圧粘度計で実測した値と良く一致した.時間-温度-圧力の重ね合わせが可能な試料に対しては,誘電緩和現象を利用した高圧粘度の予測が十分に可能であることが明らかとなった.また大気圧下における動的粘弾性測定では,10^5Pa・s程度の高粘性を示す低温下において弾性挙動が顕著に現れることが確認された.誘電測定から求められる緩和時間の大きさから推測すると,弾性流体潤滑下における潤滑油は粘弾性体として取り扱う必要があると考えられる.
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