研究概要 |
昨年度製作したペーパ摩擦材を圧縮加振する試験機の摩擦材試料取り付け台座と荷重ロッドの間に独自に設計したセルフアライメント機構をつけ加えることによって,摩擦材試料・相手面間の当たりのばらつきと試験機の変形や振動応答による測定誤差を同時に解決し,測定精度の改善と測定範囲の拡大を図った. この試験機を用いて,正方形接触面の一辺の寸法と厚さを数段階に変化させたペーパ摩擦材試料に対して,潤滑油を含む場合(湿)と含まない場合(乾)それぞれについて圧縮加振による変形応答の測定を加振周波数を変化させて行った.そして,Voigt固体(2要素粘弾性固体)モデルのあてはめにより算出した弾性率および粘性率から湿/乾の比率(弾性率比,粘性率比)を求め,これらの周波数応答を試料間で比較することで接触面積の効果と厚さの効果を評価した その結果,10Hz以上の高周波数域において粘性率比は著しく大きくなり,その程度は接触面積が大きいものほど大きく,厚さには依存しなかった.理論的考察より,粘性率比(潤滑油が摩擦材内部を流動するときの抵抗の程度)は摩擦材試料側面積と摩擦材厚さ変化によって流入出する潤滑油体積との比率によって定まることがわかり,これによって実験結果の接触面積と厚さの効果を定性的に説明できた.弾性率比(潤滑油が圧縮を受ける程度)にも程度は小さいものの粘性率比と同様の傾向があり,同じ考察より説明がついた. 以上より,湿式ペーパ摩擦材の動荷重応答に及ぼす摩擦材形状の影響を明らかにすることができ,当初の目的を達成できたと考える.
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