研究概要 |
熱工学の系にある実在表面は,実験室の清浄な光学鏡面とは著しく異なり,・表面にはミクロなあらさがあり,その表面はなんらかの被膜で覆われているのがふつうである.このような実在表面での現象が,熱工学の系において重要になる局面が2つある.1つは固体表面間の接触熱抵抗であり,他の1つがふく射伝熱物性・ふく射応用計測である.本研究では,その課題のために次の4つの研究を行った: 第1に,接触熱抵抗を外部からその場診断するための手法を検討した.接触面の微視形状はその印加圧力と結晶組織の変形に応じて経時変化するため,その接触状態の同定法の開発が重要になるが,本研究では,そのための手法として超音波探傷法の応用を考え,金属・金属接触面における超音波反射とその面をよぎる熱通過に関するマクロ実験を実施した.第2に,接触熱抵抗のミクロ機構を解明する際にその最小の考察の要素となる,有限サイズの接触点での熱エネルギーの流れを分子動力学計算で明らかにすることを試みた.表面部の影響が顕著になる有限サイズの原子のマイクロチャネルでは,熱流は一様に流れるのではなく,おもに中心部を流れることを定量的に明らかにした.第3に,実環境下にある表面の熱ふく射特性を調べる手法として,高速スペクトル法を確立すべく努めた.可視〜赤外の波長域の反射・放射のスペクトルを1台の分光装置で繰り返し測定できるようにして,実在表面の環境下でふく射特性のふるまいを系統的に明らかにするとともに,その技術を金属表面の温度・性状診断に応用するためのアルゴリズムを開発しつつある.加えて,第4に,実在表面のふく射性質をふく射伝熱評価とふく射応用計測に生かすことを目的として,金属のあらい表面におけるふく射反射の角度特性とその伝熱パラメータ表現に関する研究を行った.
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