本研究では、磁気共鳴イメージング(MRI)装置を用いて、円筒容器内に水と砂を充填した多孔質層(飽和および不飽和状態)内の流れ分布、温度分布、湿度分布および気液界面の形状などを測定することおよび得られた実験結果に基づき多孔質層内の熱・物質移動現象の理論解明、新しいモデルの構築および実際の多孔質層内の伝熱経験式の提案を目的としたものである。前年度の研究成果に基づき、本年度は、まずMRI装置を用いることにより、これまで殆ど不可能であった、多孔質層(不飽和状態)内の湿度分布および温度分布などの測定方法(湿度計測のためのTagging法や温度計測のためのパルスシーケンスであるInversion Recovery法など)の適用性を詳細に検討した。それぞれの測定法に基づく特殊なRFコイルを設計し、湿度および温度の計測ソフトを開発した。そして、湿度および熱モデルを提案し、それらのモデルに基づく数値シュミレーションを一連のパラメータ群に対して行った。数値シュミレーション結果から、モデル化した物体内の定常および非定常湿度分布、温度分布を明らかにした。さらに、測定精度の評価を行うため、提案した湿度および熱モデルに関し、実測を試みた。毛細管力の影響を調べるため、粒径1mm以下である不飽和多孔質層に対して実測を行った場合、MRI装置の空間分解能やNMR信号の強度および信号処理上などの問題点を明らかにした。温度計測について、解析結果と比較することにより、測定精度の評価法を確立した。湿度計測については、さらに研究を行う必要がある。なお、円筒容器内の多孔質層内の熱・物質移動現象に関する理論解析および数値計算も行った。
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