研究概要 |
大型の低温機器の冷却時間を短縮するためには流路の圧損の制約から並列冷却流路を選択せざるを得ないが,温度あるいは相変化に伴う圧損の変化によって先に温度の低下した流路の方が流れ易くなり温度差が拡大する不安定性が存在する。本研究の目的は,並列流路における流量・温度不安定性の現象を評価するプログラムを作成して実験で実証することである。 今年度は,流量と温度変化を過渡的に評価するプログラムを作成して相変化も扱えるようにした。冷却重量あるいは常温での圧損が10%異なる2並列流路を一定質量流量の液体窒素で冷却する場合の温度変化を計算した結果は次の通りである。(1)2並列回路間に熱交換が無い場合には冷却が進行するにつれて流量比が約20%にまで拡大して温度差も拡大する。(2)2並列流路間が熱交換する場合には冷却途中の流量比と温度差がほぼ一定値に収束し,熱交換が良いほど小さな偏差に早く収束する。(3)片方が液体窒素温度に到達すると一気に流量比が10倍以上に拡大して,侵入熱が所定値以上の場合には冷え遅れた方の温度は上昇に転じる。 解析と並行して,並列回路間の熱接触の影響を評価できるような試験体を製作した。まずコイル状に巻いた内径3.6mm,長さ約30mの鋼管を厚さ10mmと6mmの銅板で挟んで隙間を樹脂で埋めて一体化した試験体を2つ製作した。次にガラス繊維強化プラスチックスを挿入して2つの試験体を積層して,周囲を厚さ50mm以上の断熱材で断熱してから,全体流量がほぼ一定になるように液体窒素を並列に供給して温度変化を調べた。解析から予測されたように,被冷却体の温度の低下に伴って2並列流路間の流量比と温度差が拡大し,ガラス繊維強化プラスチックスを厚くするほど偏差が大きくなる結果が得られた。
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