研究概要 |
本研究課題では,タンクの内壁面を撮影するビデオカメラなど,鋼索で吊り下げられた物体の球面振子としての.揺れを抑制する制振装置について,ジャイロ機構の応用としての観点から検討してきた.ローリングとピッチングを抑制しようとするなら,最低限で2基の単一ジンバル機構が必要である.これを4基として,2基を対として動作させるなら,スピルオーバの問題は生じない.そこで,本研究では,2基とするとき,平衡状態でのロータの回転軸が水平(横置き)と垂直(縦置き)の場合について,理論解析と数値シミュレーションにより調べた.全般に,横置きとすると,ジャイロモーメントとしてのスピルオーバはローリング,ピッチングの何れかの軸まわりでしか生じないから,慣性モーメントの小さいヨー軸への影響を低減させることができる.しかし,受動形ジャイロ制振機構としての最適調整を反映して,ジンバルは制振対象の振子とばね,ダンパで結合されており,横置きの場合は,ジンバルの回転によりヨー軸まわりのトルクが伝達される.従って,横置きの場合についても,縦置きよりわずかではあるが,振子にヨー軸まわりの自転が生じる.これらの性質は,昨年度のジャイロ機構に合わせて新たに剛体振子を製作し,ステップ応答実験により確認した.本年度は,この他,ヨー軸まわりの姿勢制御を実現する能動的なジャイロ機構(コントロールモーメントジャイロ)について検討した.このような能動機構を付加すると,ロール,ピッチ抑制に伴う受動形機構からのヨー軸まわりのスピルオーバトルクを相殺して,ヨー角変動を抑制できる.ヨーイングの制御は撮影などの実用的な用途においても重要である.鋼索で吊り下げられた物体は,製作した実験装置のようなユニバーサルジョイントで支持された剛体振子とは動的挙動が異なり,むしろ,二重振子としてモデル化すべきである,そこで,このような観点からも考察を加え,最適調整の方法と効果について調べた.
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