研究概要 |
電力貯蔵用フライホイールなどへの応用が期待されている高温超電導磁気軸受を用いた系では,非接触による低減衰性と電磁力に起因する非線形性とから,系に非線形振動が生じやすいと考えられる.そこで,本研究では,浮上磁石回転時に生じうる非線形振動現象の一つである結合調波共振について、非線形力学系の理論に基づき解析的に検討を行い,実験との比較,検討を行った. まず,回転する浮上磁石の水平,鉛直方向変位を考慮した3自由度の運動方程式を導出し,多重尺度法を用いた解析的な検討から,水平方向の固有振動数と垂直方向の固有振動数の和に近い振動数で磁石が回転しているとき,各方向の振幅が増大する結合調波共振が生じる可能性がある事を理論的に示した.また,結合調波共振は磁石の重心と磁気中心の偏心量がある臨界値以上であるときに生じること,結合調波共振時にみられる水平方向,鉛直方向の支配的な振動数は,各方向の固有振動数から回転周波数にしたがってわずかに変化することを示した.また,その励振された振動数の和が回転振動数になっていることを明らかにした.つぎに,浮上磁石回転軸の傾きを考慮に入れた運動の数値解析を行い,この場合にも結合調波共振が生じることを確認した.また,3自由度の運動解析結果との相違について検討し,解析の妥当性を示した. さらに,非接触の浮上回転実験を行った.レーザードップラー面内振動計により磁石の回転数およびふれ回りの変位を測定し,レーザー変位計を用いて磁石の鉛直方向の変位を測定した.この実験により,解析と定性的に一致する結合調波共振が生じることを確認した.
|