研究概要 |
圧電素子の圧電効果と逆圧電効果を一片の素子で同時に利用することにより,センシングとアクチュエーションを同時に行おうとするセルフセンシング・アクチュエータ(SSA)をより実用的なものにするために,2年間の研究の後半である本年度では,バイモルフ型の圧電素子をSSAとして機能させることによって,小型軽量で柔らかな把握が可能であるソフトハンドリング・グリッパの把握力制御に応用することを試み,以下の成果・知見を得た. (1) グリッパに物体を把持させ,物体の有無によるセルフセンシング電圧の違いから接触力を推定するアルゴリズムを構成することにより,独立な力センサを必要としない接触力検出法を提案した. (2) 提案した接触力検出法は,制御電圧とセルフセンシング電圧の2種類の信号を用いて接触力を検出するが,この検出過程は把握対象物の剛性に依存しないという特長をもつ. (3) 目標把握力をステップ関数および正弦波関数の2種類に設定して,剛性の異なる3種類の把握対象物に対して把握力制御を実施したところ,いずれの物体に対しても良好な力制御を実現することができ,独立な力センサおよび把握対象物の剛性情報を必要としない本手法の有効性を確認することができた. (4) 把握対象物やグリッパのモデル化の際に無視したダイナミクスやモデル化誤差の影響から,把握力にはわずかではあるが定常偏差が残った.さらに高精度な把握力追従を目指すには,これらを考慮した制御系設計を行い,提案した力検出法を改善することが今後の課題として確認された.
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