研究概要 |
ワイドギャップGaN結晶は高出力青色半導体レーザー(LD)を実現する材料として最近最も注目されている。しかし高品位GaNの作成に最適な基板材料の開発が強く望まれており、これは従来困難とされている青色LDの室温での連続発振実現に最も重要な課題となっている。昨年(平成9年)度において報告者は高品位GaN結晶作成に最適な新しい基板材料として(La,Sr)(Al,Ta)O_3(LSAT)を見いだし、その単結晶化、優れた特性の確認に成功した。本年度の研究では、青色領域発光素子用の基板としての応用を考慮した場合を考慮し、無着色・透明高品質LSAT結晶の作成、及びLSATを基調とした新材料探索を行った。 具体的には、 1. 作成結晶の無色化・高品質化:開発当初のLSAT結晶は褐色に着色しており、青色領域発光素子用の基板としての応用を考慮した場合好ましくなかった。本年度において、作成雰囲気の検討から純アルゴン雰囲気下で作成することによりLSAT結晶の無色化に成功した。また回転数、引上速度を検討した結果、歪みの少ない即ち格子歪みを緩和した高品質バルク単結晶の作成に成功した。 2. 新材料探索:LSATのLa^<3+>をPr^<3+>、Nd^<3+>、Ta^<5+>をNb^<5+>等、同原子置換を中心に元素置換を行い新基板材料を探索した。その結果、(Nd,Sr)(Al,Nb)O_3、(Pr,Sr)(Al,Nb)O_3、(La,Nd,Sr)(Al,Ta)O_3、(Nd,Sr)(Al,Ta)O_3(NSAT)等、数多くの新しい基板材料の候補があげられ、その中でNSATについて回転引き上げ法によるバルク単結晶の作成に成功した。作成したNSAT結晶のGaNとの格子整合性評価を行った結果、格子不整合は0.7〜1.0%(Al_2O_3は16%)と、LSATと同等の値であり新しい基板材料として期待されることがわかった。 3. 光アイソレーター用新基板材料:ベロヴスカイト型LSATのみでなく、ガーネット型結晶も検討を進めた結果、ファラデー効果の高い光アイソレーター応用薄膜作成に最適な新ガーネット基板材料Gd_3Yb_2Ga_3O_<12>の開発にも同時に成功した。
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