研究概要 |
本研究は,真空アーク放電プラズマを用いて,低温基板上に結晶構造を制御して酸化チタン薄膜を生成することをめざしている。これまでの真空アークプラズマを用いた窒化チタン薄膜の生成メカニズムの研究を通して得られているアーク放電プラズマの知見に基づいて,酸化チタン薄膜を低温基板上に生成し,その結晶構造の制御方法を確立することを目的としている。なお,本研究の期間は2年間であった。 本年度は、昨年度に改造した酸化チタン薄膜生成に対応させた真空アーク蒸着装置を、放電持続時間が5分以上持続するようにするように以下の電極系構造の改良を実施した。1.陽極構造の改良、2.陰極形状の改良、3.陰極背後に取り付けたマグネットの磁束密度の変更。さらに、10 Paオーダーの圧力でも放電を長時間持続することができるように、ヘリウムガスの導入系を追加して、放電安定性を確認する実験を行った。その結果、10Pa(He:7、O_2:3の割合)でアーク放電は5分以上消弧せずに安定に持続することを見出した。さらに、アーク放電を低電流においても安定に持続させるためには、放電電源系に直流リアクトルを追加することにより、30Aの低電流でも放電が安定に持続することを見出した。 200℃以下の低温が得られるように水冷基板を設計・製作し、圧力2Paの条件でシリコン基板上に成膜実験を行った。その結果、アーク放電プラズマを用いた方法では世界で初めて、TiO_2薄膜が形成されていることをX線回折分析により確認した。これらの結果は、応用物理学会講演会等で報告し、現在、Journalに論文投稿中である。今後は、基板温度、バイアス電位等との関連をさらに詳細に調べ、論文を発表をして行く予定である。
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