研究概要 |
近年,マイクロマシンの要素技術である電磁型アクチュエータは,より小型化あるいは薄膜化される傾向にあり,膜面垂直方向に磁化した場合の反磁界をどう抑えるかが,アクチュエータ開発の重要なポイントとなっている. 本研究では,この問題を解決するために,アルマイト磁性皮膜の構造を改良し,直径0.4-,長さ300μm,アスペクト比750の針状の磁体が,3μmの間隔で膜面垂直に無数に並んだナノワイヤ皮膜を開発し,これを利用して,小型平面アクチュエータを試作することを目的とした. 以下に,研究概要を示す. (1) 二段階陽極酸化法による反磁界係数の低減 従来のアルマイト磁性皮膜は,磁極が皮膜表面に高密度に分布するため,磁極間の静磁的な相互作用により,大きな反磁界を有する.本研究では,針状磁性体間の間隔を決める陽極酸化時の極間電圧を2段階(40V/120V)に制御し,その間隔を従来の3倍に広げ,表面の磁極密度を1/9に低減した.その結果,膜面垂直方向に磁化した場合の反磁界係数を,従来の限界値0.16から0.02に低減することができた. (2) カーリングモードによる検討 皮膜中の磁性体充填率を,0.16から0.02へと減少させると,膜面垂直方向に磁化した場合の保磁力が,1.36kOeから1.53kOeへと減少し,カーリングモードにより見積った1本の無限長円柱微粒子磁性体の保磁力1.73kOeに近づくことを示した.これにより,表面磁極による静磁的相互作用が緩和されことが明らかとなった. (3) Coナノワイヤの変形状態の観察 直径0.03μm,長さ10μm,アスペクト比約300の針状の磁体が,0.lμmの間隔で並んだCoナノワイヤ皮膜を開発し,電子顕微鏡観察により,外部磁界(lkOe程度)の印加で,Coナノワイヤが印加磁界方向に変形していることを確認した.これにより,本ナノワイヤを用いたマイクロアクチュエータの実現性が示ざれた.
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