研究概要 |
本研究の主な成果は,以下の2つである. 第一の成果は,従来の秘密鍵認証システムを拡張した新しい秘密鍵認証系を提案し,拡張した秘密鍵認証系における本質的な2つの攻撃であるなりすまし攻撃と改ざん攻撃の2つの攻撃の成功確率を,情報理論の立場から厳密に解析したことにある.拡張された秘密鍵認証系では,K個のメッセージは独立にK個の暗号文に暗号化され,復号器は受信したK個の暗号文をブロックとして一度に復号する.本研究ではまず,正規のメッセージが誤って復号される確率P^<(K)>_<error>がK→∞で0に収束する復号器の中で,なりすまし攻撃の成功確率P^<(K)>_Iをどれだけ小さくできるかを考察した.一般にP^<(K)>_IはKの指数関数のオーダーで減少するが,一般に-1/Klog_2P^<(K)>_I【greater than or equal】I(W;E)となること,また-1/Klog_2P^<(K)>_I→I(W;E)なる復号器が構成できることを証明した.ここにI(W;E)は暗号文Wと鍵Eの相互情報量を表す.また,改ざん攻撃の成功確率と関連し,盗聴者が暗号文から正しい鍵を推定する確率P^<(K)>_Gについても類似の議論を行い,-1/Klog_2P^<(K)>_G【greater than or equal】H(E|W)となること,また-1/Klog_2P^<(K)>_I→H(E|W)なる復号器が構成できることを証明した.H(E|W)はWを与えたときのEの条件つきエントロピーである.これらの結果は,秘密鍵認証系で良く知られているSimmonsの限界式と比較すると極めて興味深い. 第二の成果は,元来,白黒2値の画像の秘密分散法として有用であったNaorとShamirにより1994年に提案された視覚復号型秘密分散法(Visual Secret Sharing Scheme,VSSS)を,カラー画像や濃淡画像に適用できるように拡張したことである.提案したVSSSは束と呼ばれる代数構造に基づき,任意の色数や輝度値をもつカラー画像や濃淡画像の(k,n)秘密分散を可能にする.すなわち,この手法は,1枚の秘密画像とパラメータk,n(2【less than or equal】k【less than or equal】n)が与えられたとき,秘密画像をシェアと呼ばれるn枚の画像に分割し,n枚のシェアのうち任意のk枚を重ね合わせることによって秘密画像を復元する.k一1枚以下のシェアからは秘密画像に関する情報は全く漏れることはない.提案したVSSSは例えばコンピュータのlogin時の個人認証の
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