研究概要 |
1. 初年度(平成9年度)に引き続き、光パルス波に追従して移動する計算領域を用いた長尺光導波路解析のための時間領域有限差分(FDTD)法プログラムを用いて、直線状俳線形導波路の解析を行った。今年度は2種類の非線形光学効果(ラマン散乱およびカー効果)の相対的強さがパルス波の安定性に与える影響についてシミュレーションを行った。その結果、入射パルス振幅が同一の場合、ラマン散乱が相対的に強いときのほうがパルス波形は安定し、より長距離の伝搬が可能であることが分かった。カー効果が強いときには、パルス波形はよく保たれているものの、途中から異常に高いピーク振幅が現れ発散してしまう。この現象が数値シミュレーションの誤差によるものかどうかの検討は今後の課題である。 2. 今年度は新たに非線形方向性結合器(NLDC)の解析にも着手した。この1,2年の間に計算機のメモリ価格が急速に下落し、また高速なCPU(PentiumII,400MHzなど)を搭載したパソコンが登場したために、解析領域をあらかじめかなり大きく設定(例えば40μm×800μm、100セル×16000セル程度)し一昼夜程度の時間でシミュレーションを行うことが可能となった。すなわち、NLDC解析には計算領域が移動するFDTDプログラムを使用していない。現在は、線形分散及び非線形光学効果の強さ、入射パルス電力および波形、NLDCの構造など、多数のパラメータを設定しながらデータの収集を行っている。ビーム伝搬法などの定常解析の結果とは異なる光波の振舞いが観測されている。 3. 以上の結果をまとめて、1999 Progress in Electromagnetics Research Symposiumにて発表する計画である(1999年3月末、発表確定)。 4. 今後は、周期構造を持つ非線形光導波路を応用して、波長分割多重化(WDM)方式にパルス振幅変調(PAM)方式を組み合わせた信号を処理するための素子の研究に取り組みたいと考えている。
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