研究概要 |
衛星通信回線を用いたマルチメディア適応型のデータ通信や研究・教育用ネットワークを実現するには,1. 大容量のデータ送受信,2. 高解像度の映像の高速な伝送を実現することが必要となる.このため,衛星通信回線の特性を十分に把握し,回線品質に適応しつつ,情報を正確にかつ効率良く伝送するための通信方式を開発することが必要となる.この基礎として衛星回線の特性を評価するために,平成10年度は複数台のVSAT衛星通信システムを利用した実験と理論的な解析の両面から以下の研究を行った. 1. 降雨の影響による通信遮断が,回線品質に及ぼす影響の解析 2. 航空機による通信遮断が,回線品質に及ぼす影響の解析 3. 大気及び電離層を構成する媒質のランダム揺らぎが衛星通信のビット誤りに及ぼす影響の定量的解析 4. 観測データによる降雨減衰曲線とCCIR等により提案されている降雨減衰予測曲線との比較 この結果,複数台の機器による同時観測により,ビットエラーの発生の状況を詳細に検討できることが明らかになった.但し,インターネットを利用した遠隔制御システムの構築に手間取ったため,実際に実験できた期間が短く,定量的な評価ができるまでには至っていない.また,今回,通信誤りの状態をより詳細に評価するために中間周波数帯での送受信波形を観測するシステムの構築について検討を行ったが,システムを開発までには至らなかった.今後は,このシステムを完成させ,降雨及び航空機が通信回線に及ぼす影響をより詳細に評価したい.また,この結果を基に大容量の画像データ等の画像圧縮方式と暗号化方式の開発を目指す.
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