研究概要 |
現在,古代遺跡や地中ケーブルの探査に関する研究が盛んに行われており,様々な地中レーダが開発されている.しかし,これらの地中レーダでは,地中の媒質が不均質であるため,探査目標以外からの不要散乱波(クラッタ)が探査目標からの散乱波に重畳し,埋設物の距離や形状・媒質推定が正確に行われていない. そこで本研究では,地中媒質のランダム性から生じるクラッタを除去するフィルタの設計を目的に,整合フィルタとフラクタルフィルタの基礎特性について検討した. 整合フィルタは,クラッタを含んだ受信波形と,クラッタを含まない均質媒質から得られる受信波形との相互相関演算を行うことで,クラッタを低減するものである.本研究では,合成開口処理されたランダム媒質から得られる受信波形と,二層の地中モデルから得られる受信波形との相互相関演算を行うことで,媒質の境界検出を試みた.この結果,クラッタを低減することができ,探査目標の形状識別が可能になった.さらに,相関強度を利用することで,探査目標の媒質推定も行うことができ,整合フィルタの有効性が確かめられた. また,フラクタル解析を用いた地中レーダ信号処理の検討を行った.フラクタル解析は,ランダムデータを定量化することができるため,地中レーダで得られるクラッタを含んだ波形の特徴抽出に有効であると思われる.フラクタル解析法として,短時間データに対しても高精度な解析法であるHiguchiの方法を採用し,受信波形から探査目標の特徴抽出を試みた.この結果,探査目標の特徴抽出が行えることが分かったが,媒質が複雑で受信波形のS/N比が低い場合には明確な結果が得られなかった.今後さらにフラクタル解析法の検討が必要である.また,実験によって得られるデータへの適用も今後の課題である.
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