研究概要 |
本研究の課題は,コンピュータ・システムや通信システムをモデル化した確率離散事象システムを,あるシステム・パラメータを動的に変化させることによって制御することにありました.以下では,まずこの課題の遂行のために前年度に行った研究を簡単に述べ,続いて今年度の成果について説明します. ●前年度は,確率離散事象システムの最も基本的なモデルである単一サーバ待ち行列を考え,システムの状態を観測しながら,あるシステム・パラメータを動的に更新するような制御手法に対して,待ち行列への入力が定常過程で与えられる場合に,更新されるパラメータの値がつくる確率過程も弱い意味での定常過程になることを示しました.また,パラメータの値に最適値が存在する場合,パラメータの値がつくる確率過程が最適値を中心に変動することを示しました. ●今年度は上記の結果を利用して,ATM通信ネットワークのデータ入力のフィルタとして知られているLeaky-bucketシステムを流体入力待ち行列としてモデル化し,leakybucketシステムにおける2つのパラメータの組をシステムの状態に応じて最適な値に定める手続きを示しました.この研究成果の一部を8月にイタリアで行われた離散事象システムに関する国際ワークショップで発表し,別の一部が現在論文誌に投稿中です. ●同じ単一サーバ待ち行列でも,サーバが遊休期間を持つような場合,すなわちあるランダムな期間サーバが使えなくなるようなモデルに対しては,これまで前年度の成果の基となった手法である摂動解析法を適用することが困難とされてきました.そのようなモデルに対しても,摂動解析法を適用するための手順を示しました.
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